水道水とミネラルウォーターは何が違うの?
水道水は飲んではいけないの?
そんな疑問を持たれている人も多いのではないでしょうか?
実際、アクアソムリエになってから、友人などに会うと必ず聞かれる質問です。
その疑問に答えるためにも、今回は水道水とミネラルウォーターの2つの違いについてご説明していきたいと思います。
水道水とミネラルウォーターの違い①製造方法
水道水とミネラルウォーターはで、原水や製造方法が異なります。
水道水の原水はもとを辿れば天然水ですが、河川やダムのように地表に出てしまっているため様々な異物が混ざっています。
飲んだり使ったりできる様にリサイクルすることで水道水として飲めるようになっていますよ。
一方ミネラルウォーターは、ほとんどがそのままでも飲めるレベル地下水等を汲み上げたたものです。
水道水の元はダムや河川水などの地表水
水道水は地域によって水源が異なり、日本では現在70%以上がダムや河川水などの地表水から取水され、残りが伏流水や井戸水から取水されています(3%弱はそれ以外から取水)。
取水された原水は浄水場に運ばれ、沈殿・ろ過などの工程を行います。
都会など汚れが大きいところでは、オゾン殺菌や生物活性炭吸着処理などといった高度浄水処理を施し塩素消毒されて、浄水場から水道管を通って各家庭に届けられます。
原水となる川などの水には、家庭排水や工場排水も流れこんでいるため、水の汚れなどをきれいにするために浄水場を経由し、浄水された後に各家庭まで安全に届けるために「塩素消毒」がされているのです。
ミネラルウォーターはほとんどが地下から採水された天然水
一方で、ミネラルウォーターは、ボトルドウォーター(地下水以外の水源からも採水)のカテゴリーに含まれる水を除くと100%地下水から取水されています。
2019年に国内で製造されたボトルドウォーターは10.1%なので、現在販売されているミネラルウォーターの約90%が地下水から取水されていることになります。
水道水とミネラルウォーターの違い②安全基準
水道水とミネラルウォーターでは指標としている安全基準に違いがあります。
どちらの方が安全、というわけではありませんが、それぞれの水質に合った安全基準に則って私たちの手元に届けられます。
水道水の安全基準
その基準は、健康を守る上での指標と、生活で使う際に支障をきたさないための指標から決められています。
平成15年に水質基準として50項目が設定されてからも、厚生科学審議会答申において常に最新の科学的知見に照らして改正していくべきとの考えから、結果的に2020年現在の時点では下記の51項目に基準が設けられています。
- 一般細菌
- 大腸菌
- 工場排水などの混入によって含まれる重金属(カドミウム・水
銀など) - 地質の影響などによって含まれる物質(ヒ素・フッ素など)
- 化学合成原料
- 溶剤
- 金属の脱脂剤
- 塗料
- ドライクリーニングなどに使用される物質
- 原水中の一部の有機物質と消毒剤の塩素が反応して生成される物
質(トリハロメタン類など)
水道水を生活で使う際に支障をきたさないための指標には、着色の原因となる亜鉛、鉄、銅などや、悪臭(かび臭など)の原因となる物質、味に影響のある物質(ナトリウム、硬度など)への規定があります。
例えば、カルシウムやマグネシウムが多く含まれると石鹸が泡立ちにくくなったり、水道管にスケールが付着してしまったりすることから、硬度は300㎎/L以下と決められています。
一般的には日本の水道水の原水はほとんどが軟水なので、硬度がそれを上回ることはありません。
しかし、沖縄などで一部、軟水でない地域があり、そういった地域では浄水場で水を軟水にするためのシステムが使われているところもあります。
参考:厚生労働省 公式サイト
水道水は塩素消毒がされている
水道水は、お水が排水管を通って家庭に届くまでの間に雑菌が繫殖してしまわないよう、殺菌作用のある塩素を注入しています。
この塩素消毒によって、戦後日本では水が原因で起きる感染症などがゼロになったと言われています。
日本では、原水がきれいな場合でも必ず塩素消毒はするように水道法で決められているのです(遊離塩素濃度が給水栓で0.1ppm以上)。
とはいえ健康に影響を及ぼすような量は含まれていませんので、安心して飲むことができますよ。
ミネラルウォーターの安全基準
ミネラルウォーターの水質の基準は、殺菌・除菌がされているか、いないかによって異なります。
殺菌・除菌がされているものについては成分規格が41項目あり、殺菌・除菌されていないものについては18項目(炭酸入りのものは16項目)と採水地の環境に関する基準が設けられています。
ミネラルウォーターは飲料水として使われることが主な目的と考えられるため、成分規格の項目は水道水の健康に関する項目とほぼ一致しており、生活面に関する項目などは含まれていません。
また、殺菌・除菌されてないものについては、そもそも消毒などをしていないため消毒によって生成される物質が含まれる可能性がなく、それに関する項目などもありません。
硬度やpHなどの規定もありません。
無殺菌・無除菌のミネラルウォーターが危険なわけではない
基準項目の数だけを見ると、水道水の方がミネラルウォーターより基準項目数が多いので、水道水の方が安心という話をたまに耳にすることもあります。
しかし、決してそういうことではなく、それぞれにあった基準が適応されているということです。
日本では取水された後、加熱殺菌(中心部の温度を 85℃で 30 分間加熱)、またはオゾン殺菌やUV殺菌、フィルター除菌等がされて(商品によっては複数の殺菌方法を使用)、PETボトルやビンなどにボトリングされるというのが一般的な製造方法です。
ただヨーロッパの「ナチュラルミネラルウォーター」は、加熱殺菌や中身の成分を改変させるような除菌等は、EUの規定(CODEX)で許可されていません。
そのため、殺菌も除菌もされずにそのままボトリングされ、それが日本に輸入されています。
ネットなどで、海外のミネラルウォーターは菌だらけ、という記事をたまに見かけるのはこれが要因と言えますね。
殺菌も除菌もされていないのである意味当然のことですが、ただ含まれる菌は一般細菌とか大腸菌などの菌ではなく、従属栄養細菌という水だけを栄養にして生息しているような菌で、人体に影響を及ぼすような有毒な菌ではありません。
ただし、製造過程に問題があるような特殊な状況にあった場合には、稀に一般細菌などが出る場合があります。
水道水とミネラルウォーターの違い③味わい
水道水とミネラルウォーターでは、やはりどうしても味わいが異なります。
地域によってはほとんどミネラルウォーターのような美味しい水道水を飲めるケースもありますが、基本的にはミネラルウォーターの方が美味しいとされています。
では、水道水とミネラルウォーターではなぜ味わいに違いが出てしまうのか、ここから解説していきます。
塩素の有無
水道水とミネラルウォーター、飲み水としてその2つに大きな違いを与えている要因の一つはは、やはり残留塩素の存在です。
水道水には消毒用の塩素が含まれており、それにより独特のカルキ(塩素)臭が生じます。
ちなみに塩素や消毒生成物という、臭いに関する物質などは浄水器で除去することができます。
ミネラルウォーターは製造の過程で塩素が使われることはないので、塩素臭や消毒で生成されるような物質は含まれずクリアな味を楽しむことができますよ。
水の硬度の違い
お水の硬度の違いによっても味わいは変化します。
硬度というのは水に含まれるミネラルの量で決まり、ミネラルが多いと硬水、少ないと軟水と区別されますよ。
一般的に日本人好みのお水は軟水であると言われていて、まろやかな口当たりが特徴です。
一方硬水はというと、ミネラルが多いことで若干の苦みを感じるひと癖ある味わいとなります。
国産のミネラルウォーターと水道水はほとんどが軟水
日本で採水されたお水であれば、ミネラルウォーターも水道水も同様にほとんどが軟水です。
そのため海外製のミネラルウォーターと飲み比べると、水道水の方が飲みやすいと感じる方もいるでしょう。
ミネラルなどの栄養が入っている方が美味しいお水になりそうなイメージがありますが、必ずしもそうではないのですね。
日本国内でも水の硬度には違いが出る
日本国内の水は基本的に軟水とは言え、硬度10ぐらいのところから100を超えるところもあります。
同じ県内だから硬度が同じというわけではなく、同じ県内でも、河川水から取水している地域と地下水から取水している地域では、硬度が大きく異なることもあります。
同じ地域でも、季節によって硬度が20~30ぐらい変わることもありますまらね。
そのためお水の産地によっても、味わいに違いがでてくるでしょう。
ミネラルウォーターは選べる水の種類が多い
ミネラルウォーターは法令によって決まっている水の種類が多いことが特徴です。
引用:厚生労働省 公式サイト
以下の5種類がそろっているので、適しているものをチェックしましょう。
- ミネラルウォーター硬水
- ミネラルウォーター軟水
- ナチュラルウォーター
- ナチュラルミネラルウォーター
- ボトルドウォーター
ミネラルウォーター・硬水
ミネラルウォーターの硬水は、水1000mlの中に溶けているカルシウムとマグネシウムの量が多いものをいいます。
WHO(世界保健機構)の基準によると、120~180mg/L未満の場合「硬水」と判断できます。
マグネシウムが多いので飲みごたえを求める人には硬水をおすすめします。
ほかにも、カルシウムやマグネシウム、ナトリウムの爽やかな風味が感じられることが魅力です。
ただし、体質によってはお腹がゆるくなってしまうことがあるので注意しましょう。
ミネラルウォーター・軟水
ミネラルウォーターの軟水は、硬度が0~60mg/L未満のものをいいます。
まろやかな味わいが特徴でマグネシウムではカルシウムの量が少ないため、体に大きな影響がありません。
赤ちゃんのミルクづくりや高齢者の日常的な水分摂取も、軟水なら安心して行えますね。
やさしい口当たりながらさっぱりした風味が味わえるので、お茶をいれるときにもおすすめです。
日本で採水されたミネラルウォーターは、ほとんどが軟水です。
ナチュラルウォーター
ナチュラルウォーターとは決められた水源から採水した、地下水のことをいいます。
ろ過・加熱殺菌・沈殿以外の処理をしていないボトリングされた地下水は、ナチュラルウォーターと判断できます。
ミネラル成分が溶け出していることが少ないので、自然由来の味と風味が楽しめます。
ナチュラルミネラルウォーター
ナチュラルウォーターのうち、ミネラル成分が溶けている地下水を原水としている水です。
なかでも、沈殿・ろ過・加熱殺菌以外の処理をしていないものに限定されます。
ミネラルウォーター類の品質表示ガイドラインによって、ナチュラルミネラルウォーターの定義がくわしく決められています。
ボトルドウォーター
ボトルドウォーターとは水をボトルに詰めたものをいいます。
ボトルドウォーターは水質に決まりがないので、水道水をボトルに詰めただけでもボトルドウォーターとなります。
水質や採水地にこだわっている人は、ボトルドウォーターよりもナチュラルミネラルウォーターをおすすめします。
ボトルドウォーターもミネラルウォーターの一種です。
ミネラルウォーターの水源を紹介
ミネラルウォーターの水源には、複数の種類があります。
採水地によっても水質が異なるので、味や風味が違うことに気を付けましょう。
浅井戸水
10メートル程度の深さにある、浅めの井戸から採取された水をいいます。
採水場所が地面に近いので、地質や周囲の環境により水質や採水量が変化しやすいです。
ミネラルウォーターであっても、生活用水や家庭菜園などに利用されることが多い傾向です。
深井戸水
深井戸は30メートルよりも深い井戸で、岩盤の下の地下水を利用しています。
安定した水量と水質の水が楽しめるので、飲料のミネラルウォーターとして流通することがあります。
豊富な水源であることも、深井戸のメリットです。
湧水
湧水とは湧き水のことで、地下水が地表に現れたものをいいます。
地面に染み込んだ水分が地層によってろ過されると、地下で天然水になります。
地下でたまった天然水が湧き出たものを湧水といいます。
伏流水
伏流水(ふくりゅうすい)とは水が浸透しやすい土地に川が流れ、それが原因で地中に潜り込んだ水です。
地中の層によって時間をかけてろ過されるため、水質が良好で安定した透明度が期待できます。
伏流水は川から一定以上の距離を置いた浅井戸から汲み上げられます。
鉱水
鉱水はポンプで取水した地下水のうち、溶け込んでいるミネラルなどによって判断されます。
いわゆる、ポンプで汲み上げたミネラル成分の含まれているミネラルウォーターと言えるでしょう。
販売されているものは複数の安全基準をクリアしているので、安全性が高いため安心してください。
水道水とミネラルウォーターの得意分野と違い
水道水とミネラルウォーターの得意分野をまとめました。
風味や味だけでなく使う場面でも得意なジャンルが異なるので注意しましょう。
自分の目的にあった水を選んでください。
味や風味|ミネラルウォーターのほうがおいしい
味や風味は水道水よりもミネラルウォーターの方が美味しいです。
丁寧にろ過されているミネラルウォーターは、まろやかな風味や爽やかな味が楽しめます。
そのまま飲む場合は、水道水よりも天然水を原水としたミネラルウォーターをおすすめします。
水道水をそのまま飲む場合は、カルキの風味や臭いが気になる人もいるので注意しましょう。
料理やお茶をいれる|ミネラルウォーターがおすすめ
料理やお茶にもミネラルウォーターがおすすめです。
カルキ臭や水道水独特の風味がないので、素材や調味料の味を邪魔しません。
みそ汁やスープなどの汁物を作るときも、まろやかな味が楽しめるでしょう。
お茶やコーヒーをいれるときは、風味を損なわないようにミネラルウォーターを積極的に使いましょう。
ただし軟水や硬水の使い分けに注意して下さい。
値段|水道水の方が安い
コストはミネラルウォーターよりも水道水のほうが低いです。
利用する人数や場面によっては、ミネラルウォーターだけを使うと大きな出費になってしまう可能性があります。
費用を抑えたい人は水道水とミネラルウォーターの使い分けをしましょう。
飲み水や料理にはミネラルウォーターを使い、そのほかは水道水を利用するといった工夫が必要です。
うがいや服薬・製氷|水道水の方がおすすめ
うがいや服薬には水道水がおすすめです。
水道水には含まれている微量の塩素による殺菌効果があるので、口の中の菌を高い確率で除去してくれます。
氷を作るときも、水道水を使えば製氷機の中を清潔に保てるでしょう。
水道水の塩素成分によって、製氷機の中で水が腐ることも防げます。
水道水とミネラルウォーターの違いを理解して使い分けよう
水道水とミネラルウォーターの、成分、安全性、味わいなどの違いについて解説しました。
水道水にもミネラルウォーターにも、それぞれメリット・デメリットがあります。
どちらか一方が優れているというわけではありませんので、双方の違いを理解してバランスよく使い分けるのが良いでしょう。
利用用途によっても、適した水の種類は変わってきますからね。
いづれにしてもしっかり品質管理されたお水です。
色々と飲み比べて、自分好みのお水を見つけてみるのも良いでしょう。